銀行カードローンは任意整理できる?その注意すべきポイントとは?
銀行カードローンは総量規制の影響を受けないので、総量規制以上の借り入れができるということで利用者が多くいたのは確かです。しかし、その利用額が家計を圧迫したことで、家計が厳しくなった人も多くいます。
実際に、、銀行カードローンの任意整理を希望する人が増えています。銀行カードローンの任意整理を行うことは可能なのでしょうか。希望したとしてできるものなのか、注意点として何があるのかなど、疑問に思うことは数多くあるというのが実際のところだと思います。
そこで、銀行カードローンにおける任意整理の実際を書いていくとともに、行った場合のメリット・デメリットについて解説していきましょう。
この記事で分かること
銀行カードローンも任意整理できるのか?
総量規制後、銀行カードローンの利用者が増加
消費者金融やクレジットカードのキャッシングでは、2010年に貸金業法が改正されたことで、総量規制という名前の規制が新しくできました。
これはどういうことかというと、「貸金業者が貸付を行う場合、申込者の年収からその3分の1を上限としなければならない」ということです。わかりやすく書くと、借り入れを行う際は年収の3分の1までしか借りることができません。
そこで利用者が増えたのが、銀行カードローンでした。銀行は銀行法による規制対象となるため、総量規制は対象外の業者になります。つまり、総量規制を超えていたとしても、銀行が「返済能力に問題なし」と判断したら、貸付を受けられるということです。
実際、銀行側も一時期そうした内容をテレビCMなどで流していました。また、どの銀行でもインターネット経由で手軽に申し込みができるようにしていましたし、実際の融資もネット上ですべての手続ができるため、利用者も増加傾向にありました。
過剰貸付が社会問題化して、自己破産申請が増加
しかし、2016年頃から自己破産の申請件数が増加傾向となり、その多くが銀行カードローンを利用していることが大きな問題となりました。そこに、反社会的勢力関係者への融資が絡み、2017年からは審査の厳格化を行うことが発表されました。
また、2018年からは即日審査がなくなり、貸付上限についても総量規制に準じて年収の3分の1を上限とする自主規制が行われています。
銀行カードローンも任意整理が可能
借金問題を扱っている司法書士や弁護士事務所に問い合わせてみると、近年銀行カードローンの任意整理を希望する人が増加傾向にあるという言葉が多く聞かれました。
銀行カードローンは、消費者金融と比べると低金利なものが多いので、できるのか疑問に思い、できるのかどうか確認してみると「メリット・デメリットあるものの、デメリットに気をつけさえすれば可能」という回答でした。
ここでは、銀行カードローンで任意整理を行うことのメリット・デメリットを説明するとともに、そのデメリットを最小限に抑える方法について解説していきます。
銀行カードローンで任意整理を行うときの実際
先にも書いたように、銀行カードローンでも任意整理を行うことは可能です。しかし、実際には気をつけなければならない点も多くあります。
その点について、消費者金融カードローンで任意整理を行うときと比較することで、その注意すべきポイントを説明していきましょう。
銀行と消費者金融ではこれだけ違う!
銀行カードローンの任意整理は可能です。しかし。消費者金融カードローンで任意整理を行う場合と比べると、異なる点があるので注意が必要です。
ここでは、銀行と消費者金融で異なる点について表にしてまとめてみたので、参照してみてください。
銀行 | 消費者金融 | |
---|---|---|
金利 | 利息制限法に定められた利率範囲内 | 利息制限法の利率を超過していた時期があった |
保証会社 | 保証会社がつく | 保証会社がつくことはほとんどない |
預金口座 | 預金口座が凍結されるリスクもある | 預金口座は関係ない |
特にこの3点については、任意整理をするにあたって特に影響が出やすい項目です。銀行カードローンで任意整理を行う際は、特に注意が必要といえます。
銀行カードローンで任意整理を行うときの特徴
銀行カードローンの任意整理を行う際の特徴を書く前に、消費者金融で任意整理を行う場合のそれとの比較を書いてみました。消費者金融との違いを見たことで、銀行カードローンの任意整理が少し違うということがうっすらながらわかったのではないでしょうか。
それでは、銀行カードローンにおける任意整理の特徴は3つあります。
- 必ず保証会社がつく
- 銀行口座が関係してくる
- 過払い金が発生することはない
必ず保証会社が絡んでくる
銀行カードローンと消費者金融カードローンの最大の違いは、保証会社の存在です。
消費者金融カードローンは、無担保・保証人なしで借り入れができるローンなので、よほど金額が大きいローンでもない限り、保証人も担保も必要となることはありません。ですので、基本的には利用者と消費者金融会社の1対1です。
一方、銀行カードローンには保証会社が存在します。銀行で借り入れた際、万が一返済ができなくなったら、銀行への返済はその保証会社が行います(代位弁済)。
保証会社から代位弁済を受けると、保証会社は利用者に返済請求を行うことになります。問題はそれだけではありません。銀行によっては延滞管理を債権回収会社(サービサー)に委託しているケースもあります。
この場合、正常に取引が行われているときは銀行に、すでに取引が遅滞しているのであれば、延滞に関しては債権回収会社、代位弁済後は保証会社というように3社を相手にするということになる可能性もあります。
銀行の保証会社も、以前は系列のクレジットカード会社が主流でしたが、大手消費者金融が次々と銀行傘下に入ったことで、銀行カードローンの保証会社が消費者金融会社というケースも増えてきました。
例えば、三菱UFJバンクイックの保証会社はアコム、三井住友銀行カードローンの保証会社はSMBCコンシューマーファイナンス株式会社(プロミス)です。
もし、銀行カードローンの保証会社が消費者金融であれば、消費者金融は任意整理をしなくていいというわけにはいかなくなります。借り入れがないのであればいいのですが、保証会社からも借り入れているのであれば、消費者金融の借り入れも原則として任意整理の対象となります。
銀行口座が使えなくなる
銀行カードローンは、自行の口座を持っていないと利用できないものが大半でした。しかし、最近は口座を開設しなくても利用できる商品も増えています。
ただ、同じ銀行に預金口座を持っている人も多くいらっしゃいます。もしかしたら、返済用口座と給与振込口座が同じという人も多いでしょう。
銀行カードローンで任意整理をすると、任意整理を行う対象となる銀行の預金口座は凍結されます。現在は1人1口座が徹底されていますが、以前は別々の支店で口座の開設が可能だったので、もしかしたらそのまま別支店の口座を持っているという人もいるでしょう。
その場合は、別支店の口座も凍結の対象となります。凍結されるのは大変にきついともいえますが、銀行にとっては債権を保全しなければならないので、致し方ありません。
ちなみに、債務整理を行った対象銀行の口座は全て凍結されると書きましたが、凍結されるとどうなるのかについて一覧にまとめたので、参考にしてみてください。
凍結前の状態 | 凍結されたあとの対応 |
---|---|
口座に全財産が入っている | 引き出すことができず、生活にも困る |
給与振込指定口座だった | 早急の変更が必要 |
公共料金等の引き落とし口座 | 早急の変更が必要 |
残高がほとんどない | 影響なし |
口座を凍結されると、お金を引き出せなくなります。給与振込口座であれば、早急に変更しないと、そのまま振り込まれても1円も引き出せません。公共料金などの引き落とし口座にしていた場合も同様で、凍結されているので、引き落としできません。
凍結時の残高は、その銀行からの借入額を限度に相殺されます。つまり、凍結される前に現金を引き出していなかった場合、給与振込指定をそのままにしていた場合は、振り込まれるごとに全額返済完了になるまで、ずっと返済が続きます。
借入額が少ないのであればいいのですが、それなりにある状態であれば、今後数カ月に渡ってまったくお金がないという状態になることも考えられます。
凍結されるといっても、他の銀行で口座を作ることは可能です。例えば三菱UFJ銀行の口座が凍結されたとしても、三井住友銀行やみずほ銀行など他の銀行で口座開設を行い、それを使うことはできます。
また、凍結された口座も代位弁済が終わったら再び利用できるようになります。一生涯利用できないというわけではないので、その点は安心してください。
なので、凍結される前に少しでも引き出しておくこと、給与振込もしくは引き落とし口座に指定しているのであれば、早急に別の銀行へ指定することが大切です。
少しでもお金を残すことを考えてください。
過払い金は発生しない
任意整理のメリットは引き直し計算によって元本が減少する可能性があることです。借入時の金利によっては過払いの可能性もあるため、その分の利息が戻ってくる可能性もあります。
特に消費者金融などの貸金業者では、利息制限法の上限を超える、いわゆるグレーゾーン金利で貸付を行っていた時期もあるので、尚更その可能性は大きいわけです。
一方、銀行カードローンは、利息制限法の上限金利を守っているので、仮に任意整理を行っても、任意整理後の金利は発生しないものの、元本は減りません。取引期間の長短に関係なく、元本の金額は同じです。
銀行カードローンで任意整理する場合のその他注意点
銀行カードローンで任意整理を行った場合における、消費者金融との違いから注意しなければならないポイントについては3点をあげていきました。
しかし、それ以外にも注意しなければならない点もあります。
- 毎月の返済負担が増える可能性もある
- マインバンクとしての取引は難しくなる
毎月の返済額が増える可能性が出てくる
銀行カードローンと消費者金融の違いに、毎月の返済額があります。一般的に銀行は毎月の返済額も低く設定されています。
そのため、任意整理前と任意整理後では毎月の返済額に違いが出てきます。あくまでも一例ですが、同じSMBC系列の三井住友銀行とプロミスでの返済例を表にしてみました。
借入残高 | 三井住友銀行カードローン (任意整理前) |
プロミス (任意整理前) |
36回分割払い例 | 60回分割払い例 |
---|---|---|---|---|
50万円 | 10,000円 | 13,000円 | 13,888円 | 8,333円 |
100万円 | 15,000円 | 26,000円 | 27,777円 | 8,333円 |
200万円 | 25,000円 | 40,000円 | 55,555円 | 33,333円 |
任意整理の支払い額はあくまでも交渉次第です。なので、もちろん支払い負担が減る可能性がないとはいえません。しかし、絶対に支払い負担を減らせるとはいえないので、毎月の返済額は増えることを前提にしておかなければなりません。
任意整理後はメインバンクとしての取引は難しい
任意整理をした場合、信用情報機関には5年~10年程度の期間その情報が登録されます。信用情報機関の情報は、一定期間を経過すると消えますが、任意整理の対象となった銀行では永遠にその情報は消えません。
情報が消えないということは、住宅ローンなどの各種ローンを組むことが難しくなることはもちろん、各種信用取引も難しくなるでしょう。
ですので、一度任意整理をしてしまうと、メインバンクとして使うことは困難といえます。もし、対象銀行をメインバンクとして使っていたのであれば、今後は変えなければなりません。
銀行カードローンの任意整理にはメリットもある
これまでは、銀行カードローンの任意整理を行う際の注意点について書いていきました。注意点だけ見ると、銀行カードローンの任意整理は怖いものというイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし、これはあくまでも銀行カードローンで債務整理を行う場合に注意しなければならない点です。これは、どの銀行で任意整理を行う場合でも共通のことなので、消費者金融と比較していくと異なる点は出てきます。
銀行の場合は、過払い金が発生しないというだけで当然メリットもあります。それは、将来利息がカットされる点です。将来利息というのは、返済を行い続けることで発生する利息のことをいいます。
例えば50万円を年利14.6%で借り入れ、毎月10,000円すつ返済するとしましょう。その場合、完済するまでに78ヶ月(6年半)、支払総額は約77万円(元本50万円+利息約27万円)です。
90万円を同じく年利12.6%で借り入れ、毎月18,000円ずつ返済する場合で考えると…。完済までには約72ヶ月(6年)、支払総額は約128万円(元本90万円+利息約38万円)となります。50万円の場合であれば半分以上、90万円の場合でも4割強が利息に当たる計算ですね。
これは追加で借入をしない、かつ毎月の返済額が一定の場合の計算となります。多くのカードローンで採用されている残高スライドリボルビング方式であれば、支払回数も多くなるので、支払総額・利息とももっともっと多くなるでしょう。
そういったことを考えると、毎月の支払い負担は大きくなったとしても将来利息をカットして返済するメリットは十分にあります。
困ったときは、弁護士などの専門家に相談しよう
任意整理は簡単なものではありません。さまざまなケースを想定して動くことが必要です。
借金問題を専門としている弁護士や司法書士などの専門家は、そうした情報を持っているので、さまざまな疑問に答えてもらえるので、利用する前に相談してみてください。
参考リンク:全国の債務整理・借金問題に強い弁護士・司法書士|債務整理弁護士相談広場
銀行カードローンの任意整理に関する疑問
任意整理に関する疑問をまとめてみたので、参考にしてみてください。
給与振込先の口座になっているが解決方法は?
任意整理の対象となる銀行カードローンの口座を持っていて、かつそれが給与振込の指定口座になっている場合、振り込まれた給料が借り入れの返済に充てられる可能性があります。
返済が終わるまでは凍結が解除されないので、できるだけお金を引き出しておくと同時に振込先口座を変更してもらう必要があります。
しかし、給与振込の指定口座は会社から指定されている場合(会社のメインバンクであること)がほとんどなので、なかなか「振込先を変更してほしい」とは言いにくいものです。
会社によっては、カードローンなどによる借金は厳禁というところもあるので、それを理由に関係が悪くなるということもあり得るかもしれません。
その場合は、任意整理を依頼した弁護士や司法書士に代理人として交渉してもらうという方法もあります。つまり、銀行の支店長に直接事情を説明してもらうのです。
銀行も勤務先との関係があるので、なかなか給与の差し押さえというのはできません。自ら出向いても話は聞いてもらえないので、必ず専門家に依頼してください。
他行の銀行口座は作れますか?
任意整理の対象となる銀行でなければ、他行の銀行口座を作ることは可能です。
例えば、三菱UFJ銀行のバンクイックで任意整理を行うとき、同行の銀行口座を持っていれば、その銀行口座は代位弁済が済むまで(最短で1~3ヶ月くらい)凍結されます。
ですので、対象となる銀行の口座は一定期間利用できません。しかし、他の銀行(三井住友などのメガバンク、ジャパンネット銀行などのネット銀行など)での口座開設は普通にできますし、引き出しももちろん可能です。
他の銀行で任意整理を行っているからといって、他の銀行とも取引できないということはないので、その点は安心してください。
任意整理をしたら、他銀行のローン取引などに影響は出る?
任意整理などの債務整理を行うと、信用情報機関にその事実が登録されます。これは、絶対に避けることはできません。
情報が載ってしまうと一定期間は掲載されるので、任意整理の種類にもよりますが5年~10年間は他銀行のカードローンや住宅ローンなどといった各種ローンは利用できなくなるので、注意が必要です。
ただし、一生取引できないわけではありません。一定期間(5年~10年)経過すれば、マイカーローンや住宅ローンも利用することができるようになるでしょう。
あまりおすすめできる方法ではありませんが、どうしてもお金が必要というのであれば、配偶者や両親など身内の名義でローンを組む方法もあります。
あくまでも緊急時の手段として、そういう方法もあることを頭の片隅に入れておいてください。
銀行カードローンの任意整理~まとめ
過払い金はないものの、支払いが大変になったらやってみる価値はある
銀行カードローンは基本的に利息制限法の範囲内で貸付を行っているので、過払い金による引き直しが発生することはまずありません。
しかし、そのまま支払いを続けることで発生するであろう利息(将来利息)はカットできる可能性があるので、その点では先の見えない返済をズルズルと続けることを避けられるというメリットはあるでしょう。
しかし、消費者金融にはない保証会社やサービサーとの問題が出てくる、口座が凍結されるなどのリスクがあるのも事実です。
弁護士や司法書士などの専門家と相談した上で進めていくことをおすすめします。