法的に有効な借用書を作成して金銭トラブルを回避！注意すべき5つのポイント

親子間、兄弟間、友人間など、個人間でお金の貸し借りをする時には、必ず「借用書」を作成しておきましょう。

借用書がなく、口約束でお金を貸し借りすると「大きな金銭トラブル」に発展してしまう恐れもありますが、借用書があることで金銭トラブルを回避できる可能性を高められるためです。

本記事では、個人間で金銭貸借する方へ向けて、「借用書とは」、「法的に有効な借用書の書き方」、「金銭トラブルを防ぐために、借用書の作成時に注意すべきポイント」、「借用書を書いたけれど、お金を返してもらえなかった時にすべき行動」などについて、詳しく解説を進めていきます。

借用書とは

そもそも「借用書（しゃくようしょ）」とは、どういった書類のことを指すのでしょうか。

借用書とは金銭貸借時に交わされる書類のこと

借用書とは、お金の貸し借り時に交わされる書類のことです。また、この借用書は、貸主が借主にお金を渡すと同時に、借主から貸主へ渡されます。

借用書がないと借金を返済してもらえない？

個人間でお金の貸し借りを行った場合、借用書がなくても借主は貸主へ借金返済の義務があります。

借用書がないと借金の事実を証明しにくい

しかし、借用書が無い場合、借金が行われた事実を証明しにくい（できない）ため、借主が「お金を借りていない」と主張すれば、借金を返済してもらえない可能性があるのです。

借用書があれば借金の事実を証明できるようになります。個人間の金銭貸借でも、必ず借用書を作成して、金銭トラブルを未然に防ぐようにしましょう。

借用書に記録しておかないと借金を忘れてしまう恐れもある

長期間に渡ってお金を貸していると、借主貸主間で「借金の金額」や「貸し借りが行われた事実」など、お互いの記憶が曖昧になり、個人間で大きなトラブルになってしまう可能性もあります。

いくら親しい間柄であってもお金のトラブルで人間関係が壊れてしまう恐れもあるため、お金の貸し借りをする場合は、「借用書」を作成し、借金の記録をしっかり残しておきましょう。

借用書の法的効力

借用書は、借主が借金を返済しなかった時に裁判で証拠として利用できますが、借用書に記入漏れなどの不備がある場合は「有効な借用書として認められない」ケースもあります。

次の項目では、「法的に有効になる借用書」の書き方について解説します。

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法的に有効な借用書の書き方

借用書には、必ず以下の7つの項目を記載してください。

借用書に記載する必要がある7つの項目

1. 書類のタイトル「借用書」
2. 書類作成年月日
3. 貸主の氏名（手書き）
4. 借主の氏名と住所（手書き）、押印
5. 返済年月日
6. 返済方法
7. 借金の金額（大字）

それぞれの項目を解説していきます。

書類のタイトル「借用書」

借用書の書類には「借用書」というタイトルを記載しておきましょう。借用書と書かれていない場合は、借用書として認められない可能性があるので注意してください。

書類作成年月日

借用書には書類の作成年月日も記載してください。なお「年」は、和暦（令和◯年）、西暦（20◯◯年）どちらでも問題ありません。

貸主の氏名（手書き）

貸主の氏名は手書きで署名します。

借主の氏名と住所（手書き）、押印

借主は、氏名の署名の他に住所も記載し、押印します。印鑑は実印でなくても認印でもOKです。

返済年月日

「借入から◯ヶ月後」や「借入から◯日以内」などに設定すると日数の認識の違いからトラブルになりやすいため、必ず返済期限の「年月日」を記載するようにしてください。

返済方法

銀行振込による返済なのか、手渡しによる返済なのか、借入金の返済方法を記載します。また、「一括返済」、「分割返済」などについても記載しておきましょう。分割返済する場合は毎月何回、何日にいくら返済するのかを決めておき、借用書に記載するようにしてください。

借金の金額（大字）

借金の金額は、アラビア数字や漢数字ではなく、大字（だいじ）で記載します。

大字は、「壱（1）、弍（2）、参（3）、肆または四（4）、伍または五（5）…」という数字の漢字です。分からない数字の大字があればインターネットなどで調べてみましょう。

借用書のサンプル

上記の必要項目を含めた借用書のサンプルは以下のようなものになります。

借用書のサンプル ダウンロード（当サイト作成）

上記をプリントアウトして必要項目を記入・押印すれば「法的に有効な借用書」となるため、個人間で金銭貸借する方は、活用してみましょう。

借用書作成時に必ず注意すべきポイント

また、「借用書」の作成時には以下のポイントにも注意が必要です。

• 未成年者と交わす借用書は無効
• 借金が1万円以上になる場合は収入印紙が必要
• 貸主または借主が一方的に不利になる契約内容は認められない
• 利息を設定する場合は「利息制限法」の上限利率を超えてはいけない
• 法的効力を高めるためには「公正証書」を作成する

それぞれの項目について、詳しく解説していきます。

未成年者と交わす借用書は無効

未成年者は、成年者（成人）と比べ、契約・取引に関する知識や経験が不足しているという理由から、契約によって未成年者が不利益にならないように法律で保護されています。

未成年者と法定代理人の同意なしに借用書の契約を交わしても、法的に認められない＝借用書が無効になるので注意してください。

借金が1万円以上になる場合は収入印紙が必要

また、契約書に記載された借金の金額が1万円以上だった場合、収入印紙を貼付する義務があるので気をつけておきましょう。

出典元：No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで｜国税庁公式サイト

例えば、借金30万円の借用書の場合は、400円分の収入印紙の貼付が必要です。

なお、収入印紙は文書に対する課税で文書成立のための必須要件ではないため、借用書に収入印紙を貼付しなくても「借用書」として認められます。

しかし、借用書に収入印紙がない場合は過怠税として印紙税額の3倍（印紙税額＋印紙税額の2倍）が徴収されるので、1万円以上の借用書を作成する時には収入印紙の貼付忘れがないように注意しましょう。

貸主または借主が一方的に不利になる契約内容は認められない

借用書の内容が貸主や借主に一方的に不利になる契約内容だった場合、「借用書」として認めてもらえません。どちらか一方が不利益をこうむらない内容の借用書にしてください。

利息を設定する場合は「利息制限法」の上限利率を超えてはいけない

また、金銭貸借に利息を設定する場合、「利息制限法」の上限利率を超えてはいけません。

上記の上限金利を超える利息は無効となるため、必ず利息制限法内の利率を設定してください。

法的効力を高めるためには「公正証書」を作成する

借用書は「法的に有効な書類」ですが、さらに法的効力を高めるためには「公正証書」を作成しましょう。

公正証書とは、公証人法に基づき公証人が作成する公文書のことです。公正証書があれば、裁判を起こさなくても「差し押さえ」を裁判所に申し立てられるようになります。

ただし、公正証書の作成には貸主・借主（代理人も可能）が公証役場へ出向き、公証人に書類を作成してもらわなければならない点に注意が必要です。

借用書を作成したけれど、お金を返してもらえなかった時は？

最後に、借用書を作成して契約を交わしたけれど、借金を返済してもらえない…という時にとるべき行動について解説します。

1. 電話やメールなどで借金返済を督促する
2. 借主の自宅などへ訪問して返済を求める
3. 内容証明郵便で借金を請求する
4. 法的手段によって借金を回収する

電話やメールなどで借金返済を督促する

借用書に記載された期日に借金の返済がない場合、電話またはメールで借金の督促をしましょう。もし借主が返済期日を忘れていただけだった場合は、すぐに借金を返済してくれるでしょう。

借主の自宅などへ訪問して返済を求める

電話やメールなどで連絡が取れない場合、借主の自宅などへ訪問し、借金返済を求めましょう。一般的に、電話やメールに比べて、対応に応じてもらえる場合が多いです。

内容証明郵便で借金を請求する

自宅へ訪問しても借金の返済に応じてもらえない場合は、「内容証明郵便」で借金を請求しましょう。

内容証明は、「どのような内容の文書を誰から誰あてに差し出されたか」を証明する効力があります。

法的手段によって借金を回収する

自宅への訪問や、内容証明郵便を送付しても借金返済に応じてもらえない場合、最終的には借用書を裁判所へ提出して裁判を行い、借金を回収します。

差し押さえや民事訴訟、強制執行などの手続きをするために、まず弁護士や司法書士などへ相談してみましょう。ただし裁判を起こすと、貸主・借主の間に大きな溝ができてしまい、人間関係の修復が不可能となる恐れがあるので注意してください。

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個人間で金銭貸借する場合は「借用書」で金銭トラブルを未然に防ごう

本記事では、「借用書とは」、「法的に有効な借用書の書き方」、「金銭トラブルを防ぐために、借用書の作成時に注意すべきポイント」、「借用書を書いたけれど、お金を返してもらえなかった時にすべき行動」などについて、詳しく解説を進めてきました。

「借用書」に記載する項目に漏れがないように注意する

• 借用書とは金銭貸借時に交わされる書類
• 借用書がなくても返済義務が認められるが、「借金の事実」を証明しにくい
• 借用書を作成しておくことで、借金の金額などを記録できる
• 借用書は裁判時の有力な証拠となる
• 法的に有効となる借用書を作成するためには「書類のタイトル」「作成年月日」「貸主・借主の氏名」「押印」「借金の金額」などを必ず記載する
• 借用書に記載する金額は「大字（だいじ）」を利用する
• 未成年者とは（原則）法律上契約が認められないので注意
• 1万円以上の借金の場合は借用書に収入印紙を貼付する必要がある
• 利息を設定する場合は利息制限法の上限を超える利息は無効となるので注意
• 法的効力を高めるには「公正証書」を作成する
• 借用書を作成しても返済してくれない場合は「電話やメールで督促」する
• 電話やメールで督促しても借金を返済してもらえない場合は内容証明郵便で督促する
• 借金の返済が行われない場合は、借用書を裁判所へ提出して裁判を行う

個人間で金銭貸借を行う場合は、必ず借用書を作成するようにしましょう。借用書がなく、口約束だけでお金の貸し借りが行われた場合は、「借金の事実」を証明しにくく、借金を回収できないなど、大きな金銭トラブルに発展してしまう恐れがあるためです。

また、法的に効力がある借用書を作成するためには、借用書に「書類のタイトル」「作成年月日」「貸主・借主の氏名」「押印」「返済期日」「返済方法」「借金の金額」を必ず記載してください。

ただし、個人間で大きなお金を貸し借りすると借用書があっても金銭トラブルが起きる＝人間関係が壊れる恐れもあります。このため、お金の借入を検討している方は、個人から借り入れするのではなく、銀行や消費者金融のカードローンからの借入も検討するようにしてみましょう。