カードローン契約者本人が死亡した場合、借金の返済はどうなる?
カードローンでお金を借りた後、借りたお金は全額返済しなければなりませんが、もし、カードローン契約者本人が死亡した場合、借金の返済はどうなるのでしょうか。
本記事では、「カードローン契約者が死亡した時の各カードローン会社の対応」、「カードローンの借金を受け継ぐ相続人」、「相続人がカードローンの借金を放棄する方法」、「カードローンの借金を受け継ぐ時の返済の手続きの流れ」などについて、詳しく解説していきます。
この記事で分かること
カードローンの契約者が死亡した時の借金の返済〜各金融機関の対応
金融機関の利用規約に記載されている「カードローン契約者が死亡した場合」に該当すると考えられる箇所を、下の表にまとめてみました。
金融業者名、またはカードローン名 | カードローン利用規約内の該当箇所 |
---|---|
アコム | (第14条 1項) 会員が都合により退会する場合、債務の全額を完済 |
SMBCモビット | (第23条 1項) 支払停止となったとき、債務の全額をただちに支払う |
三井住友銀行カードローン | (第12条 1項) 解約事由が発生すれば、ただちに本債務全額を返済 |
三菱UFJ銀行バンクイック | (第12条 1項) 支払いの停止の場合、直ちに貸越元利金等を支払う |
カードローンのサービスを提供する各金融業者の公式サイトに記載されている「カードローンの利用規約」には、直接「申込者の死亡」に関する項目は見当たりませんが、「会員都合の退会」や「支払い停止」時の返済に関する項目を確認できます。
カードローン契約者が死亡した場合は、「退会」、「支払い不可」の状態となるため、上の表で紹介した利用規約の条項が適用されると考えられます。
カードローン契約者が死亡した後は一括返済が基本
どの金融機関でも、カードローンの返済が不可となったり、返済停止になったりした際には、「ただちに全額を返済する」との記載を確認できます。
しかし、カードローン契約者本人が死亡した場合、その本人がカードローンの借金を全額返済するのは不可能です。では、「誰」が死亡したカードローン契約者の代わりに返済を行わなければならないのでしょうか。
カードローン契約者が死亡したら「相続人」が借金を受け継ぐ
原則、カードローンの借金は、「相続人(法定相続人)」が受け継ぐことになります。
相続人はプラスとマイナスの資産を受け継がなければならない
配偶者や親、兄弟などの身内が死亡した後の相続は、貯蓄や不動産などの「プラス」の資産だけではありません。相続人は、(プラスの資産を受け継ぐ場合)借金などの「マイナス」の資産も受け継ぐ必要があります。
このため、カードローンの借金を残したままカードローン契約者本人が死亡した場合、「相続人がカードローンの借金を肩代わりして、全額返済する義務」が発生するのです。カードローンの借金がある人の遺産を相続する方は、「借金の受け継ぎ」に関して十分に注意しておきましょう。
誰が死亡したカードローン契約者の相続人となる?
なお、誰が相続人(法定相続人)となるのかは、民法により以下の順序と決められています。
相続人の順序 | 死亡した人との関係 | 内容や補足 |
---|---|---|
(最優先) | 配偶者 | 死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。 |
第1順位 | 死亡した人の子供 | その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。 |
第2順位 | 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など) | 父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。 |
第3順位 | 死亡した人の兄弟姉妹 | その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。 |
法定相続人になるのは原則、配偶者となりますが、いない場合は子供、両親や祖父母、兄弟姉妹の順で相続人が決められます。
身内に亡くなった人がいる方は、ご自身が「法定相続人」にあたるのかどうか、上の表で確認してみましょう。
相続人がカードローンの借金を相続しない方法はある?
ただし、法定相続人であっても、故人のカードローンなどの「借金を相続しない・受け継がない」方法もあります。
財産の相続を放棄すれば借金を放棄できる
故人が残した資産や借金は、「法定相続人」が受け継ぐことになります。また、資産や借金の相続の種類には、以下の3種類があります。
- 単純承認
- 相続放棄
- 限定承認
単純承認とは「死亡した方の資産と借金を相続する」方法ですが、相続放棄や限定承認をすれば「死亡した方の借金を受け継がない」ことも可能です。
借金を受け継がない相続放棄や限定承認とは?
死亡した方がカードローンなどで作った借金を受け継がない「相続放棄」や「限定承認」について確認していきましょう。
「相続放棄」とは?
相続放棄(そうぞくほうき)とは、民法上の概念、用語の一つであり、相続人が遺産の相続を放棄すること。被相続人の負債が多いなど相続に魅力が感じられないケースや、家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退するときなどに使われる。相続放棄とは、故人が残した不動産や貯蓄などの遺産とローンの借金などの遺産、つまりプラスとマイナスの遺産を放棄する方法です。
相続放棄すると、故人の借金を背負わなくてよいのですが、プラスの遺産も放棄することになるので注意してください。プラスの遺産と借金の総額を比較し、遺産よりも借金が多い場合に相続放棄するようにしてください。
借金を受け継がない「限定承認」
限定承認(げんていしょうにん)とは、民法上の概念、用語の一つであり、相続人が遺産を相続するときに相続財産を責任の限度として相続すること。相続財産をもって負債を弁済した後、余りが出ればそれを相続できる。また、借金を貯蓄や不動産の遺産で返済した時の余りの資産だけを相続する「限定承認」という方法もあります。この限定承認を選べば、相続する資産より負債が多い時、相続人は負債を返済する必要がなくなります。
ただし、限定承認は「相続人が複数人いる場合、全ての人の同意が必要」で、「相続する財産の目録を作成し家庭裁判所に提出が必要」です。限定承認での相続は、手続きが煩雑になりやすいため、利用されるケースはあまり多くはありません。
単純承認すると相続人がカードローンの借金を返済する
なお、相続人になったことを知ってから3ヶ月以内に「相続放棄」や「限定承認」の届け出をしなかった場合、自動的に「単純承認」での相続となります。相続放棄や限定承認をする方は、必ず3ヶ月以内に手続きを行いましょう。
※相続放棄や限定承認の決定を迷っている場合は、相続人になったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申請すれば、相続方法の決定を延期できます。
単純承認でカードローンの借金を返済する方法
単純承認とは、「遺産」と「負債」の両方を相続する方法です。単純承認で相続する場合、故人にカードローンなどの借金があれば、相続人は故人に代わって借入を完済しなければなりません。
原則カードローンの借金は一括で返済する
カードローン契約者が死亡した場合、「借金を一括返済」しなければなりません。
契約者が死亡した後、カードローンの借金を分割払いできる?
ただし、死亡したカードローン契約者が一括払いできるだけの手持ちの現金がない…などの場合は、カードローン会社と事前相談することで、分割払いの返済へ変更できる可能性もあります。
一般的に相続したカードローンの借金は一括返済が多い
また、口コミなどを参考にすると、一般的にカードローンの借金は数十万円〜300万円以内である場合が多く、相続したカードローンの借金は一括で返済する方が多い傾向があります。
一括で返済できるだけの金額であれば速やかに全額を返済し、高額な借金で一括返済できない場合は事前にカードローン会社へ連絡して返済方法を相談してみましょう。
亡くなった配偶者や親などの借金を調べる方法
なお、カードローンなどで借金をしていても、相続人である配偶者や子供などに「借金の事実を伝える」という方はあまりいません。
このため、カードローン契約者が亡くなった後、しばらくしてからカードローン会社(または金融業者)から相続人宛に借金の一括返済を求める書類が届き、「故人のカードローンの利用の事実を知る」というケースも少なくありません。
故人の信用情報を開示して「カードローンの利用」を確かめる
故人の借金を知らずに遺産相続してしまうと、資産よりも債務の方が上回っている場合、ご自身の資産を使い、受け継いだ借金を返済しなければならなくなります。
このような「損」をしてしまわないために、ご自身が「法定相続人」になった後、故人がカードローンなどの借金があるのかを前もって知っておく必要があります。
ローンの利用の有無は、その故人の「信用情報」を開示すれば分かります。カードローンやクレジットカードの利用履歴はCICやJICC、銀行のローンの利用履歴は全国銀行協会が管理しているため、「故人に借金があるかも知れない…」と不安に思う方は、信用情報の開示手続きを行いましょう。
カードローン契約者が亡くなり遺産を相続する場合、損しない相続方法を選ぼう
本記事では、「カードローン契約者が死亡した時の各カードローン会社の対応」や「カードローンの借金を受け継ぐ相続人の概要」、「相続人がカードローンの借金を放棄する方法」、「カードローンの借金を受け継ぐ時の返済の手続きの流れ」などについて詳しく解説を進めてきました。
相続人になった方はカードローンの借金を調べるために故人の信用情報を開示する
- カードローン契約者本人が死亡した後、借金の一括返済を求められる
- カードローンの借金は、法定相続人が借金を受け継ぐ
- 遺産相続はプラスの資産とマイナスの債務(借金)の両方を受け継がなければならない
- 法定相続人は「配偶者」が最優先
- 亡くなった方に配偶者がいない場合、子供、両親、祖父母、兄弟姉妹の順序で相続人となる
- 相続人になっても「財産放棄」や「限定承認」をすれば借金の相続は不要
- 相続放棄とは資産と負債、すべての相続を放棄すること
- 限定承認とは、借金を遺産で返済した時の余りの資産だけを相続すること
- 限定承認は相続する財産の目録を作成して家庭裁判所へ提出する必要がある
- 限定承認は手続きが煩雑なため、利用されるケースは多くない
- 単純承認とは、資産と債務の両方を相続すること
- 相続人になったことを知った時から3ヶ月以上経過すると、自動的に「単純承認」での相続になる
- 一般的に、カードローンの借金を相続した後、一括返済する方が多い
- カードローン会社へ返済方法を相談すれば、分割返済へと変更してもらえる可能性もある
- 故人にカードローンの借金があるかどうかは「信用情報の開示」で調べられる
配偶者や親などがカードローンを利用していて、返済中に契約者本人が死亡してしまった場合は「法定相続人」として、借金を相続しなければならない可能性があります。
ただし、「限定承認」や「相続放棄」の手続きを行えば、死亡した方に代わってカードローンの借金を返済する必要はありません。
なお、限定承認は「手続きが煩雑」で、相続放棄は「貯蓄や不動産などのプラスの資産も放棄することになる」ため、限定承認や相続放棄をする時には、損にならないと判断した上で手続きを進めるようにしてください。
単純承認で死亡した方の借金を受け継ぐ方は、カードローン会社へ事前相談することで、分割払いへと変更してもらえる可能性もあります。
資産などのプラスの遺産と、カードローンの借金などのマイナスの遺産、両方を受け継ぐ方は、本記事を参考にしながら「損しない相続方法」を選ぶようにしてください。