給付型奨学金とは?返さなくていい奨学金の種類と活用のポイント
奨学金を利用して学校に行くことを検討している方の中には、「学費を奨学金で工面しても、卒業後に返済していくのが大変そう…」という方もいるかも知れません。しかし、奨学金の中には、「給付型奨学金」があり、学費等を給付してもらえる制度もあるのです。
本記事では、「給付型奨学金の概要」、「日本学生支援機構の給付型奨学金」、「大学が提供する給付型奨学金」や「民間団体が提供する給付型奨学金」などについて、詳しく解説を進めていきます。
給付型奨学金の概要
まず、給付型奨学金制度の概要について解説します。
給付型奨学金制度とは学費を返済しなくても良い奨学金制度
給付型奨学金制度とは、その名称の通り、「奨学金」を「給付」してもらえる制度のことです。「給付」なので、支給された奨学金は返済不要です。
また、奨学金の中には、給付型奨学金と貸与型奨学金がありますが、「貸与型奨学金」は借りたお金を返済しなくてはならないので注意してください。
給付型奨学金を提供しているのは国の機関や大学、民間団体
なお、給付型奨学金を提供しているのは、主に以下の3つの機関があります。
- 日本学生支援機構の給付金奨学金
- 大学の給付型奨学金
- 民間団体の給付型奨学金
次の項目から、機関や大学、民間団体が学生に対して、どのような「給付型奨学金」を提供しているのかを紹介していきます。
日本学生支援機構の給付型奨学金
まず、日本学生支援機構が提供している給付金奨学金について詳しく解説していきます。
日本学生支援機構の給付型奨学金への申し込み条件
日本学生支援機構の給付金奨学金へ申し込むには、以下の条件を満たす必要があります。
給付型奨学金の種類 | 申し込み条件 |
---|---|
高校生等対象の奨学金 | 当該年度3月に高等学校等(本科)を卒業予定の人、高等学校等(本科)を卒業後2年以内の人 |
大学生等対象の奨学金 | 大学等への入学時期等に関する資格、または、在留資格等に関する資格がある人 |
大学生等対象の奨学金の申し込み条件の詳細について、具体的に確認してみましょう。
- 大学等への入学時期等に関する資格がある人
- 在留資格等に関する資格がある人
大学等への入学時期等に関する資格がある人
大学等への入学時期等に関する資格とは、以下の通りです。
・高等学校等を初めて卒業(修了)した日の属する年度の翌年度の末日から大学等へ入学した日までの期間が2年を経過していない人
・高等学校卒業程度認定試験の受験資格を取得した年度(16歳となる年度)の初日から認定試験に合格した日の属する年度の末日までの期間が5年を経過していない人、かつ、認定試験に合格した日の属する年度の翌年度の末日から大学等へ入学した日までの期間が2年を経過していない人
【大学生等対象】申込資格・選考基準|日本学生支援機構 より一部抜粋
在留資格等に関する資格がある人
また、在留資格等に関する資格は、以下のいずれかの条件を満たす人と規定されています。
- 法定特別永住者
- 在留資格が「永住者」、「日本人の配偶者等」または「永住者の配偶者等」である人
- 在留資格が「定住者」であって、将来永住する意思がある人
これらの条件を満たす方は、日本学生支援機構の給付型奨学金を利用できる可能性があります。なお、詳細な申し込み条件は、日本学生支援機構の公式サイトで確認してみましょう。
日本学生支援機構の給付学生奨学金の選考条件
日本学生支援機構の給付型奨学金の選考条件は、以下の2つを満たす必要があります。
- 学力基準
- 家計基準(収入基準・資産基準)
これらの選考条件について紹介します。
学力基準
日本学生支援機構が定める学力基準とは、
「高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること、かつ、将来、社会で自立し、及び活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること」
です。
家計基準(収入基準・資産基準)
また、日本学生支援機構の給付型奨学金の利用には、収入や資産についての基準値以下でなければなりません。
給付型奨学金の支給を受けられる年収の上限は、世帯数や奨学金の支給額の区分により年収の上限が異なるため、事前に日本学生支援機構のウェブサイトや窓口で確認しておきましょう。
なお、資産基準は「生計維持者が2名(父、母)の場合は資産2,000万円未満、生計維持者が1名の場合は資産1,250万円未満」となります。
日本学生支援機構の奨学金の金額は?
日本学生支援機構の給付型奨学金は、以下のようになっています。
区分 | 自宅通学 | 自宅外通学 | |
---|---|---|---|
大学 短期大学 専修学校(専門課程) | 第1区分 | 29,200円(33,300円) | 66,700円 |
第2区分 | 19,500円(22,200円) | 44,500円 | |
第3区分 | 9,800円(11,100円) | 22,300円 | |
高等専門学校 | 第1区分 | 17,500円(25,800円) | 34,200円 |
第2区分 | 11,700円(17,200円) | 22,800円 | |
第3区分 | 5,900円(8,600円) | 11,400円 |
区分 | 自宅通学 | 自宅外通学 | |
---|---|---|---|
大学 短期大学 専修学校(専門課程) | 第1区分 | 38,300円(42,500円) | 75,800円 |
第2区分 | 25,600円(28,400円) | 50,600円 | |
第3区分 | 12,800円(14,200円) | 25,300円 | |
高等専門学校 | 第1区分 | 26,700円(35,000円) | 43,300円 |
第2区分 | 17,800円(23,400円) | 28,900円 | |
第3区分 | 8,900円(11,700円) | 14,500円 |
出典:支給額|日本学生支援機構
日本学生支援機構の給付型奨学金への申請方法
続いて、日本学生支援機構の給付型奨学金を申請する方法を解説します。この項目では、「高校生等対象」の給付型奨学金の申し込み方法について紹介します。
- インターネットから申し込む
- 必要書類を学校へ提出
- マイナンバーの提出
- 採用候補者決定〜給付
給付型奨学金は、高等学校等から発行される書類を学校へ提出し、インターネット(スカラネット・パーソナル)を通じて申し込みを進めます。また、マイナンバーの提出も必要ですが、マイナンバーは学校へ提出するのではなく、所定の様式で日本学生支援機構へ郵送する点に注意しておきましょう。
奨学金の採用が決定された後、日本学生支援機構から奨学金が支給されます。
日本学生支援機構の給付型奨学金の利用時の注意点
日本学生支援機構の給付型奨学金を利用するときには、以下の点に注意しておきましょう。
- 大学へ進学中の方は「大学生等対象」の給付型奨学金へ申し込む
- 大学院は給付型奨学金の対象外で利用できない
- 単位を落として留年した場合は返還を求められる恐れがある
なお、過去には「住民税非課税世帯」や「生活保護世帯」の方は日本学生支援機構の給付型奨学金は利用できませんでしたが、制度の見直しが行われ、2020年4月からは利用できるようになりました。
また、「単位を落として留年してしまった」などの場合、給付型奨学金の給付を止められるだけではなく、奨学金の返還を求められる恐れもある点に十分に注意しておきましょう。
大学の給付型奨学金
大学が独自で提供している給付型奨学金制度もあります。
東京で給付型奨学金を提供している大学(一例)
- お茶の水女子大学
- 東京大学
- 電気通信大学
- 一橋大学
など
一橋大学で提供されている給付型奨学金の概要
参考に、一橋大学で提供されている給付型奨学金について下の表にまとめました。
一橋大学で提供されている給付型奨学金の名称 | 奨学金の給付額等 |
---|---|
一橋大学生協奨学金 | 月額2万円を2名に給付(単年度) |
オデッセイコミュニケーションズ奨学金 | 月額5万円を若干名に給付(単年度) |
小林輝之助記念奨学金 | 月額5万円を4名に給付(標準修業年限まで) |
ただし、これらの給付型給付金は、いずれも「経済的困窮度が高く、他の民間奨学団体等の給付型奨学金を受給している学生」が対象となる点に気をつけてください。
民間にも給付型奨学金がある
また、民間の団体が提供している給付型奨学金制度もあります。
団体名 | 申込み条件(要約) | 奨学金の給付額等 |
---|---|---|
三菱UFJ信託奨学財団 | 財団主催行事への出席を優先できる。三菱UFJ信託奨学財団が指定する大学で、財団指定の学部、研究科に在籍している。健康で、学業成績、人物ともに優れており、在学する学校長の推薦する等 全ての条件を満たす生徒 | 月額、大学生3万5,000円、大学院生5万5,000円、留学生大学生7万円、留学生大学院生10万円。 |
電通育英会 | 評定平均が4.0以上で大学進学に際し学資の支弁が困難な国・公立高等学校の3年に在学している生徒 | 最長4年間、月額7万円を奨学金として給付。内定者には受験等助成金として10万円、さらに入学一時金として30万円給付。奨学期間の4年間累計100万円まで支援する制度もある。 |
民間団体が提供する給付型奨学金を返還しなければならないケース
これらの民間団体の奨学金は、原則、返済義務がありません。ただし、「奨学生としての義務」を果たさない(=留年など)場合は、奨学金の返還が必要になるケースもあるので注意してください。
採用された奨学生が、電通育英会の奨学生として相応しい生活・行動を行い、「奨学生としての義務」を果たす限り、4年間奨学金を給付し、奨学金の返還は必要ありません。給付型奨学金は返済不要だが、留年すると返済義務が発生する可能性もある
本記事では、「給付型奨学金の概要」、「日本学生支援機構の給付型奨学金」、「大学が提供する給付型奨学金」や「民間団体が提供する給付型奨学金」などについて、詳しく解説を進めてきました。
給付型奨学金をうまく活用して大学へ進学しよう
- 給付型奨学金制度とは「返済不要」の奨学金制度のこと
- 給付型奨学金を提供しているのは日本学生支援機構や大学、民間団体
- 日本学生支援機構では「(これから大学へ進学する)高校生」や「大学生」に対して給付型奨学金を提供している
- 日本学生支援機構の給付型奨学金を利用するには学力基準や家計基準をクリアする必要がある
- 日本学生支援機構の給付型奨学金は区分などにより月額5,900円〜7万5,800円が支給される
- 日本学生支援機構の給付型奨学金へはインターネットを通じて申し込む
- 単位を落として留年した場合は日本学生支援機構の給付型奨学金の返還を求められる恐れもある
- 一部の大学では独自で給付型奨学金を提供している
- 大学の給付型奨学金は原則、経済的困窮度が高く、他の民間奨学団体等の給付型奨学金を受給している学生しか利用できない
- 民間の団体の奨学金制度も留年などで「奨学生としての義務」を果たさなければ、奨学金を返済する必要がある
給付型奨学金とは、その名称の通り「給付される(=返済の義務がない)奨学金」です。この給付型奨学金を提供しているのは、日本学生支援機構や大学、民間団体などです。
日本学生支援機構が提供している、高校生が大学へ進学する際に利用できる給付型奨学金は、「当該年度3月に高等学校等(本科)を卒業予定の人で、高等学校等(本科)を卒業後2年以内の人」が利用できます。ただし、単位を落として留年などをした場合、給付された奨学金を返済しなければならない恐れがあるので注意しておきましょう。
なお、大学や民間団体も返済不要の給付型奨学金を提供していますが、これらの給付金は主に「生活に困窮していて、学費の支払いが困難な方」が利用対象となっている点に気をつけておきましょう。
これから大学に進学するという方の中で学費の工面に困っている方は、本記事を参考にしながら日本学生支援機構や大学、民間団体などの「給付型奨学金」の受給に成功させてみましょう。